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Music People Vol.5 平川 象士

それが本当に好きなら、真剣にやりつづけなさい。そうすれば必ず道は開けます。

 私はライブやコンサート、レコーディングなどでドラムを叩き、時折レッスンをしているプロドラマーです。 さて、吹奏楽部の若い学生などから「どうしたらプロになれますか?」「急にドラムセットを担当することになりました。どうしたら良いですか?」という質問を受けることがあります。今回は、そんな疑問をテーマとして私なりにお話をしてみたいと思います。

●プロとは自称プロ?

 指導者やオーケストラの団員などは試験やオーディションによるものが多いですが、我々のようなフリーのミュージシャンには免許や資格がありません。プロでもレベルの差はあるものの、演奏能力の高さとキャリアで各方面から音楽家として認知してもらう感じでしょうか。演奏技術と現場での対応力、あとはコミュニケーション能力も必要ですね。周りを見渡すと意外とミュージシャンにはそんなタイプが多い気がします。良く言えば「自分の世界を持っている」「個性的」「周りに流されない人」という感じでしょうか。
 私は英才教育を受けてきたわけではないし、幼い頃からピアノを習っていたわけでもありません。そんな私がどうやって音楽に興味を持ちプロになったのか、少しお話したいと思います。

●ミュージシャンになる!

 6つ歳の離れた兄はフォーク世代で、よくアコースティックギターを鳴らし、高校で吹奏楽のパーカッションを担当していましたが、プラモデル作りに夢中の私には興味がなく、部活も小学校から中学校まで水泳部。そんな私が音楽に興味を持ち始めたのは中1の頃ラジオで聴いたチェッカーズのデビュー曲「ギザギザハートの子守唄」。音楽って面白い!と思ってからは、周りの影響もあり、ハードロックやヘビーメタル、エレキギターに興味を持ち始めました。自分のギターを購入するため、財布に大金が入っていることにドキドキしながら、自転車で1時間の楽器屋に走った覚えがあります。
 そして、ドラムに興味を持ったのは中3の頃。当時プロドラマーを目指し上京していた兄が、ドラムセットの置き場がないからと実家に楽器を置いていったのが始まりです。その後、私は高校の吹奏楽部でパーカッションを担当し、先生達の勧めで音大の打楽器科へ進学し、ドラム講師などを経て25歳の時に上京しました。
 東京では、星の数程いるミュージシャン志望の人達と同じように、アルバイトで生計を立てながらの日々。自分の実力不足を知り、家賃2万2千円の激安アパートへ移ってからは、多くの時間を練習に費やしました。私にとって10年間の共同風呂、共同トイレのアパートは、音楽に没頭できる環境でまさにパラダイス(笑)。バンドを組みストリートで鍛え、人脈を広げ、パーティーや学校公演、テーマパークといった何でもやるというスタンスで続けてきたおかげで、多くの経験を積むことができ自分のやりたい音楽や方向性を探すこともできました。

●Musician's Musician

 レッスンプロではなくあくまでプレイヤー。これを貫き通してきたおかげで、各方面で演奏する機会が生まれたような気がします。中学から目覚めたプロへの道。まさに「好きこそ物の上手なれ」ですね。私の目指す所は「ミュージシャンズ・ミュージシャン」。プロを唸らせるようなプロになる為、今もまだまだ奮闘中ですが。
 プロになるには、単純に人生のほとんどを費やしてでもそれがやりたいかどうか、ということだけかもしれません。ですから、「どうしたらプロになれますか?」という質問に対して私はよく「それが本当に好きなら、真剣にやり続けなさい。そうすれば必ず道は開けます。」と、悟りを開いた坊さんのような答えになってしまいます(笑)。

●吹奏楽の中のドラム

 『吹奏楽部員のためのドラム教本』を2011年に執筆しました。吹奏楽部ではパーカッションが担当しますが、ドラムセットは大切なパートなので、上級生が担当することが多いと思います。ただ、そこに大きな落とし穴があります。中高で3年生が抜けた途端にドラムセットを担当する、というパターン。小太鼓やマリンバが上手に叩けてもドラムセットを上手には叩けません。私も高校時代、先輩が引退するまでは絶対にドラムセットに座らせてもらえませんでした。この伝統を引き継いでいる学校は多いような印象があります。
 スティックコントロールの基礎が身に付き始めたら、ドラムセットの基礎練習も早くからさせてあげて欲しいと思っています。2年間練習したからこそ、3年生で担当した時にちゃんと演奏ができるということですね。先生方の、ドラムセットをどう指導すれば良いのか分からないと言う声も耳にします。その悩み解決の為、実際に吹奏楽指導者協会のゼミナールで講師を務めさせて頂いたことがあります。
 この教本は、指導者向けでもあり、学生が世代を越えてずっと使える教科書的な役割を目的に作りました。

●最後に

 子供達もいつか振り返った時に、吹奏楽が良い経験と思い出になると良いですね。その思い出の中に、「そう言えばあの時、プロが来て一緒に演奏したな。あれは衝撃的だったな・・・」というのも加わっていると、プロミュージシャンとしては嬉しいです。刺激が強すぎてミュージシャンを志してくれるようになると、より素晴らしいです!
 最後に、良いドラミングはバスドラムやハイハットなどの足のパートが、実はとても安定しています。足のパートは、陰と陽で言えば陰かもしれません。
 見えない部分が大切と言うことでしょうか。

平川 象士【ひらかわ・しょうじ】ドラマー 
Gravitational Force Field(Jazz Fusion)他、セッションプレイヤーとして、熱帯Jazz楽団、向谷 実とチャージ&バックスetc...。ジャズから吹奏楽まで多方面で活躍中

 

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