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Music People vol.38 本庄千穂

好きなものは上達するというのは間違いじゃない


 バトンを始めたのは4歳のときです。大分で開かれたマーチングフェスティバルを母と見に行き、ゲストで来ていたバトントワラー日本チャンピオンの演技に母が魅了されて。私自身はそのときのことを覚えていないのですが(笑)。当時はバトン教室ってあまり無かったので、すぐには見つからなかったようなのですが、私が通っていた幼稚園に偶然、九州で1位になった人がバトンを教えに来るという体験教室のようなものがあって。そうしたら親が勝手に「これは運命!」と思ったらしく、その先生について習い始めたんです。最初は週1回のレッスンでしたが、先生の勧めで毎日通うようになりました。その先生は、大分で有名な高校でも教えていたので、そこの体育館で練習させてもらっていました。5歳からは大会にも出るようになりました。当時は母が熱心で、ひとつ技を教えてもらったら、その場で母も覚えて、家に帰ってから習得できるまでやらせるんです。できるまでは寝かせてもらえなかったんですよ。「習ったものはその日の内に仕上げろ」という考えで。母はバトンなんてやったこともない人だったのに(笑)。そんなスパルタだったので、技はどんどん覚えていったんですが、楽しいというより母の期待に応えるためにやっていた感じですね。お正月でさえ、3日休んだことあったのかなってくらい、体育館で練習していました。

 後に父が転勤になるんですけれど、福岡には憧れていた先生がいて。「あの先生に習いたい」と言って家族で引っ越すことを決めました。その先生との出会いがなければ、私はもっと早くバトンを辞めていましたね。辞めたくても辞めなかったのは、親の期待ももちろんありましたが、その先生に教えてもらえているというのがやっぱり嬉しくて、辞めたらもったいないな、と思っていたんです。それに私は、バトン以外の経験は周りの人よりあまりしていないと思うのですが、バトンに関してはいろいろさせてもらっているというのが分かっていたので、なかなか辞められなかったというのはあります。
 そのうち優勝も経験して、世界大会には小5から12年間出続けました。世界大会というと誰もが目指す大会ですけど、私にとっては、それが年間行事になっていたんです。そこに焦点を合わせて1年間トレーニングを積む。その生活は辛かったけれど、いつの間にか日本代表選手にもなっていて、日本の皆さんの期待はあるし、辞めちゃいけないんだろうなって気持ちもあったし。でもそんな心情で出ているから、落ち着かないんです。3位だったり9位だったり予選落ちしたりとすごく波が激しかったんです。世界一にもなっていなかったし、半分やりたくない、半分は出たいという気持ちでやっていた。結果、大学を卒業する22歳になるまでは我慢してやっていました。


 そんな生活に区切りをつけたくて、22歳で競技を一度辞めました。練習も一切辞めて。人生で初めての開放です(笑)。でもその間、日本でやるイベントのオファーをいただく機会があったり、ちょうど所属スタジオのリサイタル公演もあったりして、恩師に「戻ってきたら?」と言っていただけて。バトン以外でこんなにも必要とされることってあるのかなとも考えました。そこで初めて「バトンが好き」と思えるようになったんです。好きになってからのバトンは、すごく楽しい。復帰後は、世界一にもなることができました。以前は気持ちにも結果にも波があったんですけど、よく言う、好きなものは上達するというのは間違いじゃないと思います。なにより、努力できますもの。選手時代に私がバトンを好きだったらもっと練習していたと思いますし、人から言われる前にもっと努力していたと思います。私は28歳で初めて世界一になったんですが、神様が、世界一になるにはそのくらい時間がかかるんだよって教えてくれたのかなって。22歳であのまま辞めていたら、世界一にもなっていないし、今の自分もない。「またバトンをやりたい」って本気で思って復帰したし、辞める前と復帰後のパフォーマンスは全然違うとも言われました。パフォーマンスってよく、人柄が出るって言うじゃないですか。だからそれが、初めて前面的に出たんじゃないかと思うんです。13回目にしてようやく(笑)。そこから「千穂の演技、好きだよ」って言ってくれる人もすごく増えて。


 福岡で習っていた先生ってちょっと特殊で、元々バレエダンサーだったんです。しかも教えたり振付したりするのが得意な先生で、20歳そこそこで指導側に回ったという。その恩師から私は「あなたは競技の先のエンターテインメントに向いている人だから、バトンの技術だけじゃダメ。演じること、表現力を身に付けなさい」と最初から言われていました。先生が作る作品って、テクニックよりも表現力を重視した作品なんです。だから私が世界大会で見せてきた作品も、表現力を重視した作品でした。大会ではテクニック面と芸術面の両方の点数を足したものが総合点なんですけど、私は圧倒的に芸術面の得点が高かったんです。だから世界一になるには、技術面を上げなきゃいけなかった。自分がやりたいのは芸術面の強い作品、でもそれを捨てないと世界一にはなれないということになって、一度、やりたいことは捨てて技術重視のものを披露しました。それで世界一になったんですけど、やっぱりやりたい作品でもう一度チャレンジしようと先生とも話して、今度は演じることを重視した作品で挑みました。その結果、それでも1位になることができました。


 その後、アメリカの大会に出ていたあるとき、大会を見に来られていた『ブラスト!』のプロデューサーに突然声をかけられたんです。もちろん『ブラスト!』は以前から知っていましたし、エンターテインメントの世界にも興味があったので、そこで競技を離れることを決意しました。それが2008年の『ブラスト2:MIX』です。そして2016年、2017年と今年は『ブラスト!:ミュージック・オブ・ディズニー』に出演します。他にも『滝沢歌舞伎』の出演やジャニーズ事務所さんの舞台の演技指導などもやらせていただいています。バトンの普及には、バトン界の人間だけでは絶対に限度があるので、こういった風に芸能の方や違った分野の方がやってくれるのは本当にありがたいです。今までバトンを知らなかった人に見ていただき、少しでもバトンって素敵だなと思ってくれる人がいれば。  私にとって、バトンは体の一部です。バトンってただの銀の棒じゃないですか。でもバトントワラーが持つと、音に合わせて体の周りをクルクルと踊っているように見えるんです。まるでバトンに命が吹き込まれるようで、私はそれがすごく好き。さらに照明が当たるとすごくきれいで魅力的なんですよ。そこに一番惹かれているんだと思います。それを自分が操ることができるというのも。

 でも毎日舞台に立っていても、相性が合わないときというのもあるんです。毎朝練習しているんですけど、そのときにうまく自分の身体に吸い付いてくれないなという感覚。だからそういうときは、バトンが体になじむようにずっと持っていて離さないようにしていたり。舞台上でも、同じことをしているようでも、やっぱりごまかせないんですよね。お客様も自分も(笑)。だから舞台は生もの。怖いですよ(笑)。
 バトンやパフォーマンスをやっている若い人たちには、過程を大事にしてほしいと思います。夢を達成することは素敵だし重要ですけど、私がバトンから一番教わったことは、努力すること。私の場合で言うと、世界一になるには、世界一の練習と努力をしなければいけなかった。夢をつかむためにどれだけ努力したか、その過程を大事にしてほしいですね。


2019年7月10日(水)~9月16日(月・祝)

全国ツアー開催!


東急シアターオーブ(東京)他
全32会場59公演

公式ホームページ:http://disney.jp/blast
(PC・スマホ共通)
ブラスト!ホームページ:http://blast-tour.jp
(PC・スマホ共通)


演奏曲目
感動あふれるディズニー音楽の数々!

「小さな火を灯せ (トリップ・ア・リトル・ライト・ファンタスティック)」
(映画「メリー・ポピンズ リターンズ」より)
「ひとりぼっちの晩餐会」(『美女と野獣』より)
「サークル・オブ・ライフ」(『ライオン・キング』より)
「アンダー・ザ・シー」(『リトル・マーメイド』より)
「彼こそが海賊」(『パイレーツ・オブ・カリビアン』より)
「メイン・ストリート・エレクトリカル・パレード」 ほか
(※曲目は変更になる場合がございますので、予めご了承下さい。)

ブラスト!:ミュージック・オブ・ディズニー
2019 年公演スケジュール

東京公演:8/20(火)~9/1(日) 東急シアターオーブ(全20 回)
山形公演:7/10(水) シェルターなんようホール(南陽市文化会館) 大ホール
愛知公演:7/13(土)7/14(日) 愛知県芸術劇場 大ホール
埼玉公演:7/15(月・祝) 大宮ソニックシティ 大ホール
静岡公演:7/18(木) アクトシティ浜松 大ホール
栃木公演:7/20(土) 宇都宮市文化会館 大ホール
茨城公演:7/21(日) ザ・ヒロサワ・シティ会館(茨城県立県民文化センター)大ホール
香川公演:7/23(火) レクザムホール(香川県民ホール) 大ホール
島根公演:7/24(水) 島根県民会館 大ホール
岡山公演:7/25(木) 岡山市民会館
山口公演:7/26(金) 周南市文化会館
広島公演:7/27(土) ふくやま芸術文化ホール リーデンローズ
広島公演:7/28(日) 広島文化学園HBG ホール
愛媛公演:7/30(火) 松山市民会館 大ホール
群馬公演:8/1(木) ベイシア文化ホール(群馬県民会館) 大ホール
福島公演:8/2(金) いわき芸術文化交流館アリオス 大ホール
宮城公演:8/4(日) 東京エレクトロンホール宮城
千葉公演:8/6(火) 市川市文化会館 大ホール
新潟公演:8/8(木) 新潟テルサ
長野公演:8/9(金) ホクト文化ホール 大ホール
石川公演:8/10(土) 本多の森ホール
京都公演:8/11(日)8/12(月・祝) ロームシアター京都 メインホール
大阪公演:8/14(水)~8/16(金) オリックス劇場
山梨公演:8/18(日) YCC県民文化ホール(山梨県立県民文化ホール)大ホール
神奈川公演:9/2(月) 相模女子大学グリーンホール(相模原市文化会館) 大ホール
兵庫公演:9/4(水) 神戸国際会館 こくさいホール
奈良公演:9/7(土)9/8(日) なら100 年会館 大ホール
長崎公演:9/11(水) 長崎ブリックホール
熊本公演:9/12(木) 市民会館シアーズホーム夢ホール(熊本市民会館)
宮崎公演:9/13(金) 宮崎市民文化ホール
鹿児島公演:9/14(土) 鹿児島市民文化ホール第一
福岡公演:9/15(日)9/16(月・祝) 福岡サンパレス

 

 

本庄千穂【ほんじょう・ちほ】
11歳で世界バトントワリング選手権大会に出場。金・銀・銅メダルを合計14個獲得。
バトントワリング8スピン世界記録達成(現在保持)。
様々なジャンルのパフォーマー、アーティストとコラボレーションし、観客を魅了している。

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