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Music People vol.20 本田 丈和

クリエイティブでいるためにお前もっと前に出て発信していきなよ!

私の音楽人生を変えた一言

 「せっかくお声かけ頂いたのに申し訳ないですが、その日は別現場が入っていてそちらには伺えません・・・」

 当時まだ私が駆け出しのディレクターだった頃、担当していた"ROTTENGRAFFTY"というバンドが千葉のbayFMの番組にゲスト出演することが決まったのだが、親しくさせて頂いていた番組DJの中村道生さんから直接携帯電話にこっそり連絡があり「メンバーや宣伝担当、ラジオ局のスタッフにも内緒で、サプライズでスタジオに乱入して、一緒に番組に出演してくれない?」との提案だった。


 私はすぐに手帳をチラ見して、スケジュール的には行けなくもなかったのだが、その時は「自分なんかが喋る時間があれば1分でも長くメンバーに喋らせてやりたい」と思い、とっさにお断りしてしまったのだった。

 中村さんからは「そうか、残念だなー!メンバーと本田君の関係が独特で他にあまり例がないから面白いと思ったんだけどねー。じゃあサプライズでコメントを自分で録音して送ってくれない?」
 もはや断る理由も無かったので(汗)コメントは送りましたが、それでもまだ本当は「私のコメントを流す時間があれば1分でもメンバーに喋らせたい」と思っていました。


 その後暫く経った頃ふと中村さんに、あの時サプライズ乱入をお断りした時の自分の本当の気持ちを告白する機会があったのですが、その時中村さんからは「本田君、それは違うと思うよ」と言われました。
 「もちろんリスナーはメンバーの生の声が聞きたいと思うけど、メンバーと日々間近で過ごしているディレクターにしか気づくことのできないメンバーの魅力というのはキミにしか語れないし、リスナーはキミしか知らないROTTENGRAFFTYの魅力を、キミの口からも聞きたいときっと思うよ」と。

 「もっと前に出るべきだ。それが大きなプロモーションにもなると思う」

 私は目から鱗が落ちました。
 私たちスタッフは決して表に出ずアーティストを影で支える黒子のような存在だと思っていましたから、正反対のことを言われたわけです。

 そして次の一言で納得。


 「僕たちはラジオDJもレコード会社のディレクターも、立場は違っても同じ"音楽紹介業"。自分が発信していないと新しい旬な情報は集まらない。クリエイティブでいるために、キミもガンガン前に出て発信していきなよ!」
 それから暫く後、私はひょんなことから中村さんに命ぜられ六本木ヒルズのバー「ハートランド」で、月に一回ラテンDJをやることに(笑)
(しかもこれが、ハートランド閉店まで10年間も続き、閉店後も場所を変えていまだに続けているという・・・)

 "LATIN SUNDAY"と銘打たれたこのラテンDJイベントには、仕事、プライベート関係無く、知り合って波長が合いそうな方には次々とお声かけをして、毎月毎月沢山の方に遊びに来て頂いては皆さんをどんどん紹介して輪を広げていきました。

 そして、その後も"しゃるろっと"という学園系V系バンドのステージになぜか体育教師役で出演したり、ドイツでエアベース世界選手権に出場し優勝して"エアベース世界一"になったり、それでサマーソニックのステージで"エアギター世界一"だったダイノジさんと共演をしたり、地元のブラジリアンパーカッション軍団"RISO"の一員として野外フェスや市民祭りに出まくったりと、発信し過ぎてしまっております(笑)

 もちろんどれもアマチュアとしての活動なのですが、自分たちなりにどうやったらお客様をおもてなしできるか、どうやったら楽しんでもらえるか、また来たいと思っていただけるかを真剣に考えることがまた本業にも活かされたり、と良いことばかり。

 数年前から吹奏楽ジャンルのCD制作も担当させて頂いておりますが、全く右も左も分からない吹奏楽業界。本当に偶然ですがラテンDJをやっていたことが縁でロケットミュージックの助安社長と共通の知人がいることが判明し意気投合!吹奏楽のことも色々と教わり助けてもらって『GOLD POPシリーズ』、『ブラバンAKB48!』、『ブラバンももいろクローバーZ!』、『ブラバンゴールデンボンバー』など、楽しい作品を一緒に制作しております!是非聴いてみてください!!(宣伝か!!笑)

本田 丈和【ほんだ・たけかず】
キングレコード(株) 制作プロデューサー

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