秋山紀夫のバンド指導ヒントvol.2「楽器と調」
楽器と調
吹奏楽を指導するにあたり、 移調楽器の性質を知っておく必要があります。以下は移調楽器の説明です。1. 調による楽器の分類
管楽器はその楽器の持つ最も特徴ある音色が出されるように作られているので様々な大きさや形があります。そして、その調も複数のグループに分別されます。ピアノやオルガンなどの鍵盤楽器は白鍵が基準で、ハ長調 (inC) となる楽器であるが管楽器はそのように基調が固定されてはいません。
では、ここで楽器と調の関係を見てみましょう。
●C調の楽器
ピッコロ
フルート
オーボエ
バスーン
(打楽器として、グロッケンシュピール、シロフォン、マリンバ、ヴィブラフォン)
●B♭調の楽器
B♭クラリネット
B♭バスクラリネット
B♭コントラバスクラリネット
B♭ソプラノサクソフォーン
B♭テナーサクソフォーン
B♭トランペット/コルネット
B♭フリューゲルホルン
●E♭調の楽器
E♭クラリネット
E♭アルトクラリネット
E♭コントラアルトクラリネット
E♭アルトサクソフォーン
E♭バリトンサクソフォーン
E♭トランペット
●F調の楽器
イングリッシュホルン
フレンチホルン(B♭の管も併せ持つF/B♭ダブルの楽器もあり)
●B♭(または、E♭調、F調)でありながらC調として低音部記号で記載される楽器
トロンボーン
ユーフォニアム
テューバ
2.記譜音と実音の関係
移調楽器の理解し難い部分は、記譜音と実音が違う点です。
記譜音=楽譜に記載された音
実音=実際に楽器から出てくる音
上図の記譜音をそれぞれの楽器で吹くと、出てくる音は以下の通りになります。
●フルート ●オーボエ
※実音と同じ
●B♭クラリネット ●B♭トランペット
※長2度低い
●E♭アルトサクソフォーン
※長6度低い
●B♭バスクラリネット
※1オクターブと長2度低い。ユーフォニアムを高音部記号で記譜した場合も同じ。
●E♭バリトンサクソフォーン
※1オクターブと長6度低い
●E♭クラリネット
※短3度高い
また、音がオクターブ高く響く楽器もあります。
ピッコロ(ソプラノリコーダーも同じ)、シロフォンがそれにあたり、上記のC音が1オクターブ高い実音として出ます。グロッケンシュピールは2オクターブ高い実音として出ます。
これとは逆に、ストリングベースは実音が1オクターブ低い。
ではこれまでに記載した様々な楽器がピアノの記譜音Cと同じ音になるためにどの音を吹けばいいのでしょうか?
●フルート ●オーボエ
●B♭クラリネット ●B♭トランペット
●E♭アルトサクソフォーン
●B♭バスクラリネット
●E♭バリトンサクソフォーン(演奏はほとんど不可能)
●E♭クラリネット
●ピッコロ(構造上この音は出ない) ●シロフォン
以下は他の楽器の記譜と実音の関係。(C調の楽器は除く)
●E♭クラリネット
実音より長3度低く記譜する。実音は記譜音より長3度低い。
●B♭クラリネット ●B♭ソプラノサクソフォーン
●B♭トランペット ●コルネット ●B♭フリューゲルホルン
実音より長2度高く記譜する。実音は記譜音より長2度低い。
●E♭アルトクラリネット ●E♭アルトサクソフォーン
実音より長6度高く記譜する。実音は記譜音より長6度低い。
●B♭バスクラリネット ●B♭テナーサクソフォーン
実音より1オクターブと長2度高く記載する。実音は記譜音より1オクターブと長2度低い。
●E♭バリトンサクソフォーン ●E♭コントラアルトクラリネット
実音より1オクターブと長6度高く記譜する。実音は記譜音より1オクターブと調6度低い。
●B♭コントラバスクラリネット
実音より2オクターブと長2度高く記譜する。実音は記譜音より2オクターブと長2度低い。
●フレンチホルン ●イングリッシュホルン
実音より完全5度高く記譜する。実音は記譜音より完全5度低い。
「in C」で記譜する楽器は記譜と実音は同じですが、前に述べたとおり、記譜音より1オクターブ高く、または低く音が出る楽器もあります。吹奏楽のスコアを読む上で、この移調の楽譜を実音に読み替える能力が必要です。少しずつ慣れるようにしましょう。
例えば以下のフレンチホルンの楽譜を見て、即座に実音に置き換えることができるようにしてください。
秋山紀夫【あきやま・としお】
前ソニー吹奏楽団常任指揮者。現おおみや市民吹奏楽団音楽ディレクター。(社)日本吹奏楽指導者協会名誉会長、(社)全日本吹奏楽連盟名誉会員、アジア・パシフィック吹奏楽指導者協会名誉会長、WASBE(世界吹奏楽会議)名誉会員、浜松市音楽文化名誉顧問、アメリカン・バンド・マスターズ・アソシエーション名誉会員。ソニー吹奏楽団名誉指揮者。