作曲者 | 八木澤教司(ヤギサワ・サトシ) |
シリーズ | オリジナル |
編成概要 | 吹奏楽 |
解説 | 常葉大学短期大学部音楽科の井上幸子教授(日本を代表するバス・クラリネット奏者)からの委嘱で作曲。お互いに音楽専門の研究機関で職務を持つ共通点から「まだ決して多くないバス・クラリネットのためのレパートリーを開発しよう」と意気投合しました。 作曲にあたって井上先生から“はてしない空”“希望に向かう力”というテーマを頂きました。この小協奏曲(コンチェルティーノ)を作曲していた2022年は、決して平和とは言えない不穏な空気が漂っていた世の中。これらのキーワードを活かした内容で、せめて音楽の世界だけは希望に満ちて欲しい、聴衆には笑顔でいて欲しいという願いを込めて作曲しました。 この作品は技術と表現の両面を要求される独奏バス・クラリネットと、単に伴奏に留まることのない見せ場のある吹奏楽パートの共演を目指しました。小編成でも演奏できますし、中学生バンドでも取り組めるように難易度を配慮していますので、プロの音楽家や音大生が指導されているスクールバンドと共演する機会の一助になれば幸いです。 井上先生の独奏、塩澤文男先生の指揮、常葉大学附属橘高等学校普通科総合芸術コース吹奏楽専攻生の演奏によって2023年1月に世界初演。作曲にあたって多くのご助言を頂きました井上先生に心より感謝申し上げます。 ※カデンツァには井上先生のアドリブ版を採譜しオプションとして加えています。 (八木澤教司) 【井上幸子教授による解説と演奏のアドバイス】 この度、八木澤教司さんとタッグを組み、新たなバス・クラリネットの協奏曲を開発できたことは、心からの喜びであり、大変嬉しく思っております。八木澤さんの作品は、これまでにも、クラリネット協奏曲を始め、素敵な曲を様々演奏させて頂きましたが、雄大な大地や大空をかけ巡るような壮大な描写が素晴らしいというイメージを持っておりました。今回も委嘱にあたり、苦難を乗り越え、大空を飛び越えていく壮大なイメージを描いて頂けたらとお願いいたしました。初演を高校生と共演するにあたり、コロナ禍で青春の変容を求められた彼等に、それでも希望を持って強く生きて欲しいと、勇気づけるものになればと願い、音でその想いを伝える気持ちもありました。様々な背景が相まって、初演は良い化学反応が起きたように思います。 演奏にあたってのアドバイスですが、前奏が終わり、aからcの前までは、バス・クラリネットが旋律を牽引します。雄大な音楽の提示が大切になりますので、身体に無駄な力を入れないようにし、自分自身をも響かせるような気持ちで音を運び、小さな音楽にならないように、心がけてください。cからは、フルートの旋律との掛け合いになります。細かな音での対話になりますが、テクニック面だけが目立ち過ぎないよう、一つ一つの音まで大切に歌うようにして寄り添いましょう。dでは、一変して、力強い魂の叫びが問われます。ここで重要なのは、確かな発音と立体的なアクセントの吹き分けです。少し大袈裟かなというくらい、書かれているアクセントや強弱、発想記号をしっかり吹き分けるようにしてください。eからは、難易度の高い細かいパッセージが速いテンポで続きます。練習をする際は、指だけの練習にならないように、連符の最後まで吹き切るような息の流れも一緒に、ゆっくりなテンポから丁寧に作りあげると良いかと思います。fはフレーズを歌い上げつつ、伴奏に細かな絡みが随所に出て来ます。1人先走ることなく、オーケストラとの丁寧に対話を楽しみましょう。gからは、オーケストラのみの演奏になりますので、そこを目指して可能な限りの大きなバトンパスをすることも、忘れないようにしてください。hからkまでは再び細かな躍動が続きますが、前述の通り、丁寧な練習を積み上げましょう。lは、g同様、オーケストラを勇気付けるような気持ちで、旋律を思い切り受け渡しましょう。mで再び、細かな掛け合いののち、カデンツァに入ります。カデンツァは、この度、楽譜に提示されたスケールを基に自作のものを演奏いたしました。自由な創造が可能な場所ですので、是非皆さんのオリジナルのカデンツァを展開して頂けると楽しいかと思います。カデンツァが終わり、曲の最後まで走り抜ける際の連符ですが、独特の音階が展開されていますので、音階の表情も感じながら、一気に勇気を持って最後まで演奏するのが良いと思います。 バス・クラリネット界の歴史に残る名作の誕生だと思います。このような素晴らしい作品をご提供頂きました八木澤教司さん、共演してくださった、指揮者の塩澤文男先生、常葉大学附属橘高等学校普通科総合芸術コース吹奏楽専攻の皆さんに、心より敬意を表します。 |
解説2 | 《八木澤教司プロフィール》 武蔵野音楽大学作曲学科卒業、同大学大学院音楽研究科修士課程修了。吹奏楽やアンサンブルの代表作は日本のみならずアメリカ、ヨーロッパ、アジア諸国、南米でも重要なレパートリーとなる。 2019年11月9日、天皇陛下御即位奉祝記念式典・国民祭典において天皇皇后両陛下「お出迎えのファンファーレ」として、東京2020パラリンピック開会式の式典音楽として作品がそれぞれ抜擢された。その他、ヨーロッパで歴史的権威のあるスペイン・バレンシア国際吹奏楽コンクールの課題曲に作品が選定、ミステリー映画「ソロモンの偽証・後篇」では《輝きの海へ》が挿入曲として使用されるなど活動は多岐に亘る。これまで全国植樹祭、全国高等学校総合体育大会、国民体育大会の式典音楽制作を歴任。その他、各種コンクール審査員、客演指揮、指導、講演、音楽雑誌執筆に加え、音楽出版社のプロジェクトアドバイザーなどを務める。 合唱曲として手がけた《あすという日が》は“希望の歌”“東日本大震災復興シンボル曲”と称され、2011年第62回NHK紅白歌合戦において夏川りみ、秋川雅史の両氏によって熱唱された。第21回日本管打・吹奏楽 アカデミー賞[作・編曲部門](2011年)受賞、平成23年度 JBA下谷奨励賞を受賞。 2020年度より関西に拠点を移し、神戸女学院大学音楽学部で作曲・音楽理論・吹奏楽の指導にあたる。 |
編成 | スコア Full Score アドバイス付きFull Score(スコアの各所に作曲者本人によるアドバイスが記載されてます) 木管楽器 Flute 1 *Flute 2(Opt.) *Oboe(Opt.) *Bassoon(Opt.) Bb Clarinet 1 *Bb Clarinet 2(Opt.) ***Bb Bass Clarinet(Opt.) Eb Alto Saxophone Bb Tenor Saxophone ***Eb Baritone Saxophone(Opt.) 金管・弦楽器 Bb Trumpet 1 *Bb Trumpet 2(Opt.) F Horns 1&2(2nd Opt.) **Trombone 1 *Trombone 2(Opt.) **Euphonium ***Tuba(Opt.) *String Bass(Opt.) 打楽器 Percussion (Bongo (or Conga),Triangle,Bass Drum,Snare Drum,Suspended Cymbal, Clash Cymbals,Gong,Wind Chime) **Trombone 1, Euphoniumいずれか1本で演奏可能 ***Bass Clarinet, Baritone Saxophone, Tubaいずれか1本で演奏可能 最小10名~演奏可能 |