作曲者 | 真島俊夫(マシマ・トシオ) |
シリーズ | 輸入オリジナル |
編成概要 | 吹奏楽 |
解説 | この作品は、関西吹奏楽界の名門校の1つである関西学院大学応援団総部吹奏楽部の創立40周年を記念して作曲の委嘱を受け、1993年の初夏に完成した作品です。初演は、同年9月17日、大阪・フェスティバルホールで開かれた、同部の第33回定期演奏会で、泉谷浩志指揮により行われました。 この作品について、作曲者は次のように述べています(記念コンサート・プログラムより)。 ──曲想は、同大学のシンボル(校章)である三日月(Crescent)を題材として構成したもので、旧約聖書に出てくる「ヤコブのはしご」(ヤコブが夢に見た、天まで届くはしごで、天使たちがそれを昇降しているのが見られたという)を遥か彼方に美しく蒼く光る三日月の端に引っかけて、その高さに到達したという憧憬を描いたものである。──音楽としては、純粋に序曲タイプの曲で、タイトルにはあまりこだわる必要はないでしょう。しかし、ヤコブについて少しここで述べてみると、旧約聖書中では、次のような人物です。 祖父は、イスラエル民族の指導者といわれたアブラハムで、その子でパレスチナの農業や牧畜の開発に努力し、民族の繁栄に尽くしたとされているイサクの次男。長男のエサウを騙して相続権を奪いますが、これがもとで兄の怒りを買い、家にいられなくなって叔父(ラバン)が住むハランへ行く途中「はしご」の幻を見ました。 そして、神の加護を確信しました。 20年後に故郷に帰る途中、神と力くらべをする不思議な経験をします。その後、イスラエルと改名しました。 飢餓にあって自分の第11番めの子でエジプトで成功したヨセフに招かれて救われたという経歴の人物で、紀元前17~16世紀頃の話といわれています。 さて、曲は12/8拍子のマエストーゾで激しく開始され、6小節の序奏のあと第1の主部に入り、ホルンが躍動的な主題を提示します。ヤコブの数奇な運命を暗示するかのようなテーマです。この主題は、トロンボーンやトランペットに引き継がれますが、やがて木管の美しい旋律による中間部もあらわれます。再びはじめの主題に戻り発展し、ホルンのメロディーで落ち着いて第2の部分に入ります。フルートやサクソフォーンが静かに美しくうたい、作曲者のいう、月へのあこがれを暗示するような魅力的な部分で、ビッグ・バンド的なサクソフォーンのサウンドも聴かれます。イングリッシュホーンのソロによる美しいテーマもあらわれ、オーボエに引き継がれて転調し、ユーフォニアムのソロへと移ります。作曲者のロマンチックな面がよくあらわれた部分です。このユーフォニアムのテーマを木管が飾って高まったあと、木管の動きが「はしご」を暗示し、次第にホルンによるはじめの第1部分へと戻っていきます。壮大なスケールの部分で、映画音楽風でもあります。第1部分は、完全な形では再現されず、やや短縮されてクライマックスをつくり、曲を閉じます。作曲者の個性がよくあらわれた作品といえます。(秋山紀夫) |