編曲者 | John Paynter(ジョン・ペインター) |
作曲者 | Malcolm Arnold(マルコム・アーノルド) |
シリーズ | 輸入クラシックアレンジ(中上級) |
編成概要 | 吹奏楽 |
解説 | マルコム・アーノルドは1921年10月21日イングランドのノーサンプトンに生まれ、ロンドンの王立音楽学校でトランペットと作曲を学び、卒業後はBBC交響楽団ロンドン・フィルのトランペット奏者をつとめていましたが、1948年奨学金をもらってイタリアに留学し、それ以後は作曲や指揮を専門としています。1952年からは映画音楽の作曲もはじめ、「戦場にかける橋」で1957年度アカデミー音楽賞を受賞したことは有名です。 この「タム・オーシャンター」は1955年3月に完成され、同年8月に作曲者の指揮で初演されました。曲はスコットランドの詩人ロバート・バーンズ(1759~1796)が同地方の方言を用いて1790年に作った詩に基づいています。詩の内容は次の通りです。 シャンターに住む農夫のタムは、妻のケイトが止めるのも聞かず、南西部の港町エアのゆきつけのバーに出かけ、友達と飲んだくれています。外は風がひどくなってきます。夜も更けてタムはやっと愛馬マギーに乗り家路につきますが、その途中のアロウェイ(詩人バーンズの生まれた町)の荒れ果てた教会の前で、魔女(カーティ・サーク)達が宴会を開いているのを見かけます。棺桶の中にはグロテスクな死人も見えます。魔女達は老悪魔ディックの笛に合わせて踊り出し、老婆ばかりの魔女の中に、タムは一人だけ若いナニイを見つけます。ナニイの踊る姿をみて思わず「いいぞネーチャン」と叫んでしまいます。それをきいた魔女達は一斉にタムに襲い掛かり、タムは馬をとばして逃げます。しかしナニイが追いついてきます。タムは魔女達が水に入れないのを知っていて、やっとシャンター近くのドーン川の近くまで逃げますが、ナニイにマギーのしっぽをつかまれてしまいます。マギーはやっとのこと川を飛び越えますが、しっぽを引きちぎられてしまい、タムはしっぽのない馬に乗ってやっと家に戻りました。この詩は「飲むときは心の中をカティ・サークが走りまわることを忘れるな。タム・オーシャンターの馬の話を思い出せ」と酔っ払いを戒める言葉で終わっています。 アーノルドはスコットランド特有のバグパイプの響きや、附点音符の特徴あるリズムや民謡風な旋律を巧みに使って、この曲を描写風にまとめています。バグパイプの低音の引き伸ばしの上にピッコロが「むかしむかしのある所に......」というように話し始め、すぐファゴットの2重奏が酔っ払いのタムを描きます。外には嵐(ティンパニ)の音も聞こえます。すっかり酔っ払ったタムが鼻歌(トロンボーン)を歌いながら馬に乗り歩きはじめます。すぐ激しい音楽が魔女達を現し、ニックの笛(ピッコロ)がきこえ、魔女の踊りがはじまります。タムは一心に眺めています(トロンボーン)。いろいろ不気味な風景も見えます。音楽は6/8拍子のスコットランドの民謡にかわり、魔女達も陽気に踊り出しニックの笛も楽しくきこえます。しかし興奮したタムは思わず叫んでしまいます(トロンボーンの短い独奏)。そのあとはご想像の通りです。音楽はちょっぴり静かに反省して、一気に終わります。 吹奏楽の編曲は、シカゴ郊外のノースウエスタン大学バンドディレクターでミッドウエスト・クリニックの委員長もつとめたジョン・ペインター(1928~1996)です。 (秋山紀夫) |