Music People Vol.82 増井 咲
私の音楽はオールジャンル
ロケットミュージックとの出会いは忘れられない事件です!
私は大学在学中から、小津安二郎監督の映画音楽を演奏・紹介する活動をしています。小津安二郎といえば、巨匠と言われる昭和の映画監督。代表作「東京物語」が、2022年「史上最高の映画100選」の4位に選出され、長年に渡り世界中から高い評価を受け続けています。もちろん私が生まれる前の遠い昔の作品です。この小津映画の音楽を数多く作曲していたのが、吹奏楽界でも有名な斎藤高順氏です。「オーバー・ザ・ギャラクシー」「輝く銀嶺」「ブルー・インパルス」・・・など出版社でありCDレーベルのロケットミュージックからもたくさん楽譜が出版されています。そのつながりでロケットミュージックの社長とお会いすることになったのですが、お互いの好きな音楽の話になり、社長がレゲエ好きということが判明! ちょうどレゲエに興味を持っていた時でしたので、「小津安二郎監督 x 斎藤高順氏 x レゲエ」のギャップに驚き、これがきっかけで話は盛り上がり楽しい時間となりました。ジャンルを超えた衝撃的な事件のような出会いでした。その後、ロケットミュージックとお付き合いさせていただくようになりました。
さて、ロケットミュージックより発売中のCD「フルートのジブリ」を紹介させてください。私が編曲・演奏した6作品収録されています:
https://www.gakufu.co.jp/collections/fluteghibli/products/orgs-1006
マイナスワン付き楽譜も出版されています。聴き応え弾き応え十分の、豪華アレンジCDです。お楽しみいただける自信作です。私が編曲・演奏した6作品は、映画のストーリー、世界観を反映させた編曲になっています。この編曲をするにあたり、今まで観ていなかった作品を含めて6つの映画をじっくり観ました。改めて見直すと、幼い頃観た時と違い、自然と人間のつながりだったり、人間同士の関係性に共感したりと、新しい発見がありました。
~以下、制作秘話~
① 魔女の宅急便
主人公のキキが箒に乗って旅立つシーンから始まります。おぼつかない飛行から高く舞い上がります。このイントロのアレンジに特に力を注いだのですが、初日のレコーディングではなかなか上手く演奏できず二日目に再度トライし、納得いく演奏ができました。
② 風の谷のナウシカ
オウムが突進してくる時の圧倒されるような感じ、それに立ち向かう力強さを表現しました。実は最後の方にバッハが隠れています。ピアノを弾く方は一度は弾いたことがあるはずです…! 少し硬めのクラシックアレンジです。
③ ハウルの動く城
レコ発ライブでも人気の曲でした。フルート奏者の要田詩織さんが「3回、流れ星が流れます。十分願い事ができる時間があります」と、洒落たことを言ってくださいました。「星をのんだ少年」、星に願いを込めたアレンジになっています。
④ もののけ姫
「和」のテイストを入れて編曲しました。途中のピッコロ持ち替え部分は、「篠笛」をイメージしています。
⑤ 天空の城ラピュタ
少年が冒険をしているような雰囲気でストーリーを追っています。シンセサイザーのループの音を印象的に使って、ラピュタが空に向かって昇り続けている様子を表現しました。
⑥ 千と千尋の神隠し
中高時代吹奏楽部でクラリネットを吹いていました。千と千尋メドレー吹奏楽編の中の「ボイラー虫」では、クラリネットでメロディを楽しく吹いた思い出があります。クラリネットで吹くスケルツァンド的な面白さをイメージしました。
こちらを読んでくださっている方の多くが吹奏楽に関わっていらっしゃるかと思いますが、制作秘話でもお伝えしたように、私も中高では吹奏楽部に入っていました。正式には「ウィンドオーケストラ部」で通称「ウイオケ」と呼んでいました。ウイオケでは6年間クラリネットを吹いていました。土曜日の部活で午前も午後もパート練の日は辛かった思い出があります。クラリネットはとても良い音がしますが、きれいな音を出すのが難しい楽器だと感じます。今、クラリネットを吹くと良い運動になるかも、、おかげで今でもB管読みが得意です。卒業公演では「宝島」を指揮しました(踊っていただけですが・・・)。
東京音楽大学ピアノ科在学中、最初にいただいたお仕事が舞台音楽でした。宮沢賢治の「注文の多い料理店」。役者さんが一人でお芝居をして、同じ舞台上で私がピアノを弾いて音楽をつけるという形でした。ちょっと不思議なミステリアスな雰囲気がとても面白く、その時作った曲も思い出深く、今でも「注文の多い料理店組曲」として演奏しています。これがきっかけで舞台の音楽や、役者さん、画家さん、ダンサーさん、陶芸家さんなどともコラボしています。様々なジャンルの方々とのコラボレーションはとても面白いです。
また、CM音楽の仕事を多くやらせていただいています。今までの広告作品を少し紹介させてください。
【アップリカ】赤ちゃんのからだとチャイルドシート 大切なお話
Vn/Vc/Pfで作曲しました。初めてアニメーションに音をつけた作品です。手描きの優しいアニメーションからくるイメージで自由に音をつけることができました。
【グランディハウス】「なんておいしいおうち」編 30秒 TVCM
お菓子の家のイメージを膨らませるため、表参道にあるクレヨンハウスに通いたくさんの絵本を読みました。このお菓子の家ができるまでのメイキング映像も面白いのでこちらも見ていただきたいです。
たくさんの音楽ジャンルがあります。私が知らない音楽、カバーできていないジャンルがたくさんあると思っています。それを開拓していくのが楽しいです。生活に密着した音楽、必要とされる音楽が、有効で楽しいものになるように、音楽を探求し続け、いつまでも音楽に関わっていきたいです。現在、ソロアルバムを制作、レコーディング中です。乞うご期待!!!
増井 咲【ますい・さき】 東京音楽大学ピアノ科卒業。中学校・高等学校第一種教員免許(音楽)取得。同大学大学院音楽研究科作曲専攻在学中、オーケストラ作品を作曲し、演奏会を行う。これまでに、ピアノを松尾英美、川上昌裕、作編曲を石川芳、糀場富美子、佐々木邦雄、藤原豊、ジャズピアノを槙田友紀に師事。 |