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Music People vol.59 三浦秀秋

時代や国を越えられる、アレンジの仕事


 こんにちは!作編曲家の三浦秀秋と申します。

 作編曲家とは名乗っていますが、主にアレンジ(編曲)の仕事をしています。かなりいろいろな分野にアレンジを書いていて、吹奏楽はもちろん、フルオーケストラ、レコーディングやライブのためのブラス、ストリングス、コーラスセクションアレンジ、またピアノトリオなど、邦楽器や民族楽器以外でしたら、生演奏のためのほとんどの譜面を書きます(たまに打ち込みのアレンジもします)。



 アレンジは楽しいです。
 古くはグレゴリオ聖歌やバッハ、ヘンデルから、最近は米津玄師さんまで、世界のあらゆる作曲家がつむいだメロディーと一緒に仕事ができます。原曲の時代や国によるハーモニーやリズムの特徴を紐解くと、まるでその曲が作られた時代の街の風景が目の前に広がるようです。またアレンジするのが歴史的名曲の場合は、今回の機会のために現代ならではの新しい要素をどう入れるか、誰にも知られていない新しいメロディーの場合は、どういうサウンドをまとわせてお披露目するか、アレンジの中でも違う楽しみがあります。
 僕はもちろん作曲もしますが、こんな時代や国を軽々と越えられるようなアレンジの仕事が特に好きです。
 当たり前ですが、僕が楽譜を書いただけだと、それはただの「やたらと細かく図が書いてある紙」なだけで、そこから何の良い音もしません。ミュージシャンに渡って、それを演奏してもらって初めて、この世に音楽が生まれます。そして、制作方の皆さんにコンサートやCDを企画・制作・運営してもらい、お客さんに来てもらうか配信・音盤を見て聴いてもらうかして、初めて僕のような譜面書きの仕事が成り立ちます・・・何と他人任せな職業!



 なので僕は基本的に、音楽に関わる人すべてに感謝して、リスペクトしています。
 プロ、アマチュア、大人、子供、社会的地位、性格、、、等でその差はありません。いろいろな境遇・年代・立場・レベルの人が演奏する曲はその人それぞれの良さがあり、アンサンブルはそのいろんな人が集まって個性が重なる無限の組み合わせの面白さがあり、つまりは全ての演奏の機会には、機会なりの面白さがあるのです。



 考え方は人それぞれだとは思いますが、音楽の練習や学習・研究にのめり込めばのめり込むほど、減点法でいろいろな可能性を切り詰めて、ナイーブな心持ちになってしまう場面をよく目にしたり、伺ったりします。
 僕はそんな時も、上手くいかないならいかない、フィーリングが合わなくてバラバラならバラバラで、そういう音楽が鳴っているのも一つのまたとない音楽の形として楽しみつつ、そこからより皆が幸せになれる方向を探って試行錯誤していけば良いのになと思います。



 「フレックスアンサンブル」・・・僕は最初書くのにあまり乗り気ではありませんでした。何の楽器で演奏されるのか分からない音符を書いて、責任が取れるものか、と思っていました。しかし考え方を変え、楽器の組み合わせが自由なことで、その様々な音楽の機会をよりバリエーション豊かに提供できる。ならばそれに耐えうるような歌心のある丁寧なライン(各パートの音の流れ)を書こうではないか・・・と思うようになって、書くことがすごく楽しくなりました。今から四百数十年前ぐらいに、それまでその場その場で楽器を充てていた楽譜に初めて楽器が指定されるようになったと言われていますが、フレックスはそれより前の時代を今一度省みる機会、とも僕には思えます。



 これからも編曲を通じて、作曲家のメロディーを、なるべくいろいろな人がいろいろな場所で奏で、世界を華やかにする機会を提供できたらと思います。

三浦秀秋【みうら・ひであき】
1982年生まれ。東京都在住。中学・高校と吹奏楽部でトロンボーンを吹く傍ら作編曲に興味を持ち、次第にそちらの世界に踏み込むようになる。高校卒業後、専門学校東京ミュージック&メディアアーツ尚美に入学し、作曲を川崎絵都夫、松尾祐孝の両氏に、ポピュラー・ジャズ理論を篠崎秀樹氏に師事。2004年3月、同校を卒業。現在オーケストラ、吹奏楽、各種商業音楽など幅広いジャンルに作・編曲をしている。
最近の目立った仕事としては、京都市交響楽団&加藤ミリヤオーケストラコンサートアレンジや、加藤登紀子シングルアレンジ、くるり各種アレンジ、ヤマハミュージックメディア「ニュー・サウンズ・イン・ブラス」編曲参加など。現在、洗足学園音楽大学講師。
2003年、日本現代音楽協会「コントラバス・フェスタ」に公募入選、出品。2004-5年、2013年、2017年、“響宴”に入選、出品。

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