Music People vol.34 三浦真理
みんなで音楽を作る喜び
皆さんこんにちは!作曲家の三浦真理です。この文章を読まれている方には、先生や学生の方も多いと思います。そこで今日は、私が管打楽器と出合った学生時代について書いてみます。
・管打楽器との出合い~国立音大時代
私は中学生の時から、国立音楽大学付属に通っていました。中1~高2までバイオリン科で、高3で作曲科に変わり、大学へ進みました。その頃は、大学にプロの先輩が沢山来ていて庭で楽器を練習していました。
私が庭をぶらぶら歩いているとよく声をかけられました。
「あ~真理ちゃん、ちょっと頼みたいんだけどさ~」
「今度、音教(音楽教室や学校で出張演奏すること)で『チューリップ』やるから、金管5重奏に編曲してもらえる?」
「はい、いいですよ」
「あー、でもホルンはアマチュアなんだ。記譜音のドからソまでしか吹けないんだよね。ひとつよろしく!」
「ハアー!?」
作曲のレッスンでは「フォーレ(フランスの大作曲家)の和声は・・・」と、うっとりする芸術の世界だったのですが、庭を歩けば『ちょっと真理ちゃん』の世界だったのです。
(よし、それなら「チューリップ」にフォーレの和声をつけてみよう!)
こうしてできた譜面で音を出したら、あら、美しい!これが、私と管打楽器との出合いでした。美しいハーモニーで書くと、美しく響く。管打楽器って面白いと興味を持ちました。
私の『王宮の物語』(原曲・金管8重奏)の第1曲、第4曲は、その頃作曲した作品がベースになっています。友人からトロンボーン・アンサンブルの作曲を頼まれ、ガブリエリみたいな響きの曲を作ってみようと書いたものです。
・友人と音楽を作っていく楽しさ
私はずっとピアノとバイオリンを演奏してきたので、レッスンの曲は大作曲家のソナタや協奏曲でした。素晴らしい作品が沢山あり、そこに新曲の必要性は感じません。しかし管打楽器はレパートリーが多くはないので、演奏家は常に新しい作品を望んでいます。多くの演奏家の友人が、私の作品を素晴らしいものに仕上げてくれました。彼らのおかげで、私はみんなで音楽を作る楽しさに目覚めました。
各地のコンクールで皆さんが懸命に演奏に取り組んでいるのを見て、いつも感動しています。全員を上位の大会へ行かせてあげたいと思いますが、コンクールではそうはいきません。しかし、コンクールに挑戦した経験は財産です。先生や友人と共に挑戦した思い出は、一生の宝物です。本番を終えた後、結果がどうであれ、心の底から湧き上がってくる充実感、音楽をやっていて良かったと、誰もが思うのではないでしょうか。
プロの演奏家のお話を聞くと、学生時代もプロになってからも、皆さん本番で結構失敗しています。トランペットのミュートを落としてしまい、ステージの上をコロコロ転がったとか。倍音で、最後の音が変な響きで終わった等。(私自身の失敗談も、もちろん数え切れないほどあります)
これを読んでくださっている皆さんも、失敗なんて気にしない、気にしない!次の本番に向けて頑張りましょう!
夢や目標に向かって挑戦している時、誰もがキラキラ輝いています。皆さんの夢がいつか叶いますように!
王宮の物語【金管8重奏】
◆グレード:4 ◆演奏時間:10:00(全7曲)◆編成:金管8重奏(Tp,Tp or Hr,Tb,Eu /Tp,Hr,Tb or Eu,Tu)
この作品は、「ある王宮の一日」をイメージして、作曲しました。王国の王女の結婚相手を選ぶためにパーティーが開かれます。王子が選ばれるまでの物語です。(三浦真理)
金管アンサンブルに優れたレパートリーが加わった! ~ある王宮の一日~この物語のイメージを追う展開も素敵だが、小回りの効いた様々な曲想の変化と対比が実に愉しく美しい! 若い奏者たちを楽器大好き音楽大好きにしてくれる素晴らしい作品となるだろう!
(国立音楽大学招聘教授 三浦徹)
ジュリエットの肖像【フルート4~5重奏】
◆グレード:3 ◆演奏時間:9:30(全10曲)◆編成:フルート4~5重奏(Fl1〜4、Opt.Fl5 Picc持替あり)
「ジュリエットの肖像」は、有名なウィリアム・シェイクスピア( 1564~1616)の「ロミオとジュリエット」がもとになっています。おそらく誰もが一度は読んだことがある作品ですが、今回作曲するにあたり、特にジュリエットにスポットライトをあててみました。 ヴェローナの名家・モンタギュー家とキャピュレット家、その争いの中でロミオに恋してしまったジュリエット。いつの世も変わらぬ世間の不条理の中で、一途に愛をつらぬこうとする、健気な乙女ジュリエットの物語です。 この作品は、フルーティスト・中野真理氏から委嘱されました。(原曲はフルートオーケストラ) 今回、フルート4重奏 / 5重奏の制作にあたり、加筆・訂正しました。(三浦真理)
三浦真理【みうら・まり】 作曲家 1983 年、国立音楽大学作曲科首席卒業。同大学院修了。第1回サクソフォーン協会主催作曲コンクール入選。ピアノデュオ国際作曲コンクール第1回・第2回入選。器楽・ピアノ・合唱、作品多数。音楽教科書掲載作品では、作詞も手がける。現在、研修会の講師、吹奏楽コンクールの審査員としても活動している。 |